和歌山県租税教育推進連絡協議会

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和歌山県知事賞
消費税率引き上げの再延期に関して
和歌山県立田辺高等学校 1年 熊本 真彩

六月一日、安部首相は来年四月に予定されていた消費税率の引き上げを二年半再延期することを表明しました。前回消費増税を延期して衆議院を解散した際には、「再び延期することはない」と明言していたのになぜこのような判断に至ったのでしょう。果たして首相の決断は正しかったのでしょうか。今回の決断に対しては経済学者や政治家の間でも賛否両論があり、将来歴史的に振り返るまでその正否は判断できないかもしれません。ただし、ネット上で公開されている「日本の借金時計」というページによると、この文を書いている時点で、日本全体の借金が一〇四三兆九九九九億…万円、国民一人当たりの借金が一九七三万…円となっています。そして恐ろしいことに、この…の部分はそれこそ目にも止まらぬ速さで増え続けているのです。

日本の八%という消費税率は先進国の中でもずば抜けて低く、現在の統計では欧米の先進国は軒並み二〇~二五%、中国でも一七%になっています。こうした事実を踏まえると、消費税率の再延期という判断には首を傾けざるを得ません。日本の適正な消費税率がどれ位かは分かりませんが、健全な財務状況を確保するためには将来的には他の先進国並みに二十%位にする必要があるのではないのでしょうか。

昨今格差社会が話題になっていますが、私は横軸の格差(各時代における格差)だけではなく、縦軸の格差(時代間の格差)にも目を向ける必要があると思います。少子高齢化時代に突入している現在、私たち若者の世代は非常に不利な立場に立たされているという事実は否めません。前の世代が残した借金を私たちの世代が有無を言わせずに背負わされるというのは、余りにも理不尽で憤りさえ感じます。あるインディアンの種族の話ですが、物事を判断する際に「果たしてこの判断が七世代先の子供たちにとっていいものなのかどうなのか」を基準にするということです。

私は、消費税を毎年一%ずつ引き上げるのが理想的だと思っています。もちろん、それには技術的な問題もあり、費用の面でも効率は悪いかもしれません。それでも毎年一%という数値は非常に明確で、国民自体も納得しやすいものです。税率を一気に引き上げると消費が落ち込み、経済情勢に悪影響が出ます。今回の安部首相の判断にもそのことが影響しているようです。それならいっそのこと、毎年一%という明確な数値を打ち出し、「来年買うより今年買った方が一%分得だ」と国民が思えるようにすればいいのです。

いずれにせよ少子高齢化時代の中で社会保障の面からも、この消費税の問題は決して避けては通れないものです。それ故に単に政治家や役人の判断にのみ委ねるのではなく、私たちも一人一人がもっと真剣に考える必要があると思います。それぞれの世代はリレーのランナーなのです。できる限り良い状態で次の世代にバトンを渡す責任があるのです。

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