和歌山県租税教育推進連絡協議会

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和歌山県知事賞
きっかけは郷土愛
近畿大学附属新宮高等学校 1年 中地 智里

八月のある日、新聞記事に目が止まった。
「プロジェクト応援型ふるさと納税」

憲法に定められているからなのか、「税」イコール「義務」と思いがちだ。消極的なイメージの言葉に、「応援」という積極的なイメージの言葉が付くことに、違和感を覚えた。そもそもふるさと納税についてほとんど知識がない。他府県ではどうなのかも含め、調べてみた。

その制度では、七つのメニューがあり、自分が応援したいプロジェクトを選んで寄付することができるという。寄付金総額のうち、昨年度はほぼ半分がこのプロジェクト応援型だった。「遠く離れた場所に暮らしていても、使い道がはっきりしていれば、古里とのつながりをより強く感じてもらえる」とこの制度を広めているそうだ。私は消費税を払っている。しかし、その税金で建てられた公共施設を見たとしても、「あの時の税金がここに使われたんだ。」と強く感じることはない。それと違って、自分で寄付する事業を決められれば、納めた税金が役立っている、と実感でき、納めた喜びも感じられるのではないだろうか。昨年度のメニューの中で最も寄付金額が多かったのが、「母校応援、きぼう応援奨学金」と呼ばれるものだ。寄付先の高校を選べる、という点にひかれるのだろう。寄付金の半分は、生徒のために、物品購入や体育・文化行事などに充てられ、残りは経済的支援が必要な生徒への奨学金など県全体の高校教育に活用されるという。確かに高校では、教科書購入だけをみてもお金がかかる。支援を受けられれば、より充実した高校生活が送れるだろう。

しかし、デメリットもある。それは、納税者に送られる「特産品」に関する事だ。納税者が特産品目当てで納税先を選ぶようになり、寄付額に偏りが出ている。そのため、自治体同士で特産品の豪華さを競うようになり、中には赤字になる自治体も出てきたという。寄付で事業を応援できるのがふるさと納税のメリットであり、目的だ。せっかくの税金が特産品のために使われているとなると、本末転倒だ。本当にその自治体を応援したい、という思いがある人だけが納めるべきだ。自治体側も、特産品の豪華さで競うのではなく、納めてもらった税金をどれだけ上手く活用できるかを競えば良いのではないだろうか。そうすれば、納税者、自治体、住民の全員が納税の良さを感じられる。

私は今まで税について関心がなかった。だから、漠然としたイメージしか持っていなかった。しかし、ふるさとを応援する気持ちが形となって表れるのが「ふるさと納税」ならば、「発展を実感できる嬉しい税」だ。各自治体の小さな応援が積み重なって、日本全体が元気になるかも知れない。だから「応援」し続けよう。いつか納税者となった時には。ふるさと、そして日本の発展を願って。

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