和歌山県租税教育推進連絡協議会

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大阪国税局長賞
税金の光
智辯学園和歌山中学校 3年
 川本 陽太郎

僕は、子どもの心を大きく蝕むのは、「孤独」だと考えている。小学生の時に読んだ、「トットちゃんとトットちゃんたち」という本には、両親を失った子どもたちが泣くのは、傷が痛い時ではなく、夜寝る前に両親のことを思い出した時だと書いていた。僕自身はありがたいことに両親と兄、そして祖父母にかわいがられながら育ったので、子どもの頃に「孤独」を味わったことはない。でも、想像することはできる。どんなに呼んでも両親が答えてくれない辛さや苦しみが、傷の痛みよりも大きいということも、わかる。夜、真っ暗になった時に泣いてしまうその子どもの心のいたみが、わかる。多分、僕が想像している数十倍もの強い痛みなんだろうということだって分かっている。

日本には、アフリカの子どもほどの苦しみを味わっていなくても、「孤独」で悲しんでいる子どもたちは、いる。そんな子どもたちを助けるための食堂があるということを、僕は、つい最近、新聞を読んで知った。その食堂の名前は「こども食堂」。ここでは、一人でご飯を食べなければならない子どもが、たくさんの人との関わりを持って食卓を囲むのだ。「こども食堂」に来る子どもたちには、様々な事情がある。両親が共働きの夜勤ありで家に帰ってこない子、教育を受けられない子、また、学校へ行きたくない子。それぞれがその小さな胸に苦しみや悲しみを抱えている。どの子もまだ幼くて、自分の胸にささっているものが、どんなものかも説明できない。「助けて」と声をあげる方法すら知らないし、その状態が「孤独」とか「寂しい」という状態であることも知らない。でも彼らにとって「こども食堂」の灯りは、寄り付きたくなるあたたかさを備えているのだ。無料で、どんなときも迎え入れてくれる場所があれば、子どもたちは強くなれる。「帰る場所」「迎え入れてくれる人」は、子どもたちにとってなくてならないものだ。僕は、その施設が税金で成り立っていることに、少しだけ誇らしさを感じる。民間で誰かがやればいいと考えるのではなく、国ぐるみでその施設を支援しているのが、日本という国なのだ。日本という国の税制度が、小さな幸せを温かく照らし、未来への希望の光となっているのだ。「食堂」と名前がついているけれど、物質的にお腹が膨れるだけじゃない。心まで満たされるようなあたたかな雰囲気なのが、この「子ども食堂」の大きな特徴だ。僕は、この「子ども食堂」が、税金によってどんどん増やされて、寂しい思いをする子どもが一人もいなくなれば良いのにと願っている。

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